CATツールとは
CATツールは、翻訳の効率と品質を向上させるために開発されたソフトウェアです。これには、用語集や翻訳メモリ(過去の翻訳例を蓄積し、参照可能にする機能)が含まれています。
機械翻訳システムの活用や背景情報の調査にも用いられ、翻訳プロセスを支援する自然言語処理技術も組み込まれています。CATツールは翻訳作業を補助するものであり、Google翻訳のような翻訳ツールとは異なり、翻訳者を置き換えるものではありません。
CATツールの主な機能
翻訳メモリ(TM)
過去の翻訳を保存し、新しい翻訳が必要な際に既存の翻訳を再利用する機能です。文書の改訂時には、以前に翻訳した内容を再利用することが多く、この機能により、同じ文章を繰り返し翻訳する手間が省けます。これにより、文書の一貫性が保たれ、時間も節約されます。
用語データベース
専門用語や企業固有の言語を保存し、誤用を防ぎます。データベースに登録された用語が原文に含まれている場合、翻訳時に自動で情報が表示され、文書全体で一貫した言語使用が可能になります。
自動翻訳統合
一部のCATツールは、DeepLやGoogle翻訳などの外部翻訳ツールとの連携が可能で、機械翻訳を活用して初期の翻訳案を出します。翻訳者がこれを修正することで、時間の短縮が図られます。ただし、機械翻訳だけでは品質に不安が残るため、人の目での確認と修正が不可欠です。
CATツールの種類
CATツールには様々な種類があり、それぞれ異なる機能と特徴を持ちます。翻訳者のニーズに合ったツールを選べば、作業効率と品質が向上します。
SDL Trados Studio
「トラドス」と呼ばれ、広く利用されているソフトウェアで、2013年の調べでは実に73%の翻訳者がトラドスを持っているという調査結果が出ました。トラドスは翻訳メモリを中心に構築され、用語管理や自動翻訳統合などの機能を備えています。特徴としては、元のレイアウトを壊さずに翻訳作業を行えるため、翻訳後のレイアウト作業が必要ありません。そのため、ページ数の多い案件に最適なソフトウェアと言えます。
MemoQ
翻訳効率と共同作業を重視するCATツールで、翻訳メモリや用語データベースを活用して翻訳の一貫性を保ちます。クラウド上で作られるオンラインプロジェクトを活用し、複数の翻訳者が同時に作業をすることが可能です。柔軟なプロジェクト管理と強力な共同作業ツールが優れています。
Wordfast
使いやすさとコスト効率を重視するCATツールです。直感的な操作性と効率的な翻訳サポートが特徴で、多様なファイル形式に対応し、他のCATツールとの互換性も高いです。無料でダウンロード可能であり、一定の制限はありますが、幅広い機能が利用できます。
実際のCATツールを使った翻訳プロセス
①プロジェクト設定
CATツールで新しいプロジェクトを作成し、必要な言語ペアと翻訳メモリを設定します。
②ファイルインポート
翻訳する文書をCATツールにインポートし、テキストを編集可能なセグメントに分割します。
③翻訳作業
翻訳メモリと用語データベースを参照しながら、セグメントごとにテキストを翻訳します。
④レビューと編集
翻訳した内容を見直し、必要に応じて編集や修正を行います。
⑤品質保証
CATツールの品質保証機能を使用して、一貫性や文法のエラーをチェックします。
⑥ファイルエクスポート
最終的な翻訳を元のフォーマットにエクスポートし、クライアントに納品します。