翻訳者におすすめの検定・資格
JTFほんやく検定
JTFほんやく検定は、日本翻訳連盟(JTF)が実施する翻訳検定です。実践的な実務翻訳の技能を測る試験で、申し込みから受験まで全てオンラインで行われます。インターネットに接続されている環境であればどこでも受験できる点は、この検定の特徴とも言えるかもしれません。
受験級は、実用レベルの1級から5級まであります。1級は専門家の翻訳であると認定され、2級は実務で十分に通用する翻訳力があると認められます。
出題分野は、情報処理、電気、機械、化学、医学、薬学、法律、特許、金融、経済など多岐にわたります。合格のメリットとしては、JTF加盟の翻訳会社(約170社)から仕事を獲得する機会が広がる事です。
特に、実用レベル2級以上の合格者は、「検定合格者リスト」に登録され、翻訳会社からの注目度が高まります。
NIPTA知的財産翻訳検定
NIPTA知的財産翻訳検定は、日本知的財産翻訳協会(NIPTA)が実施する検定試験です。特許、商標、契約書などの知的財産関連文書の翻訳スキルを評価します。英日・日英翻訳の両方向で、1級から3級までの試験が用意されています。
知的財産分野の翻訳は、高度な専門性が求められる分野です。NIPTA知的財産翻訳検定に合格することで、知的財産翻訳のスペシャリストとしての実力を証明できます。
特に、1級の合格者は、NIPTAのウェブサイトで公開される「1級合格者リスト」に掲載され、知的財産翻訳者としての地位が高まります。
受験対策としては、知的財産関連の専門用語や表現に慣れることが重要です。特許明細書や契約書などの実際の文書に数多く触れ、頻出表現を押さえておきましょう。NIPTAでは過去問題集も販売されているので、出題傾向をつかむのに役立ちます。
TQE翻訳能力検定
TQE翻訳能力検定は、株式会社サン・フレアが実施する検定試験です。産業翻訳分野のプロフェッショナルな翻訳者としての能力を認定します。英語、中国語、韓国語など、複数の言語で実施されています。
TQEの特徴は、実際の翻訳業務に即した形式で試験が行われることです。受験者は指定された期間内に、実際の原文を訳文に仕上げる必要があります。
単なる語学力だけでなく、限られた時間内で品質の高い訳文を作成する実践的なスキルが問われます。TQEに合格すると、「翻訳実務士」の称号が与えられます。
これは、プロの翻訳者としてサン・フレアに登録できる資格で、翻訳業界での信頼度が高まります。受験対策としては、実際の翻訳案件を想定して、時間を計って訳出する練習が有効でしょう。
JTA公認翻訳専門職資格試験
JTA公認翻訳専門職資格試験は、日本翻訳者協会(JTA)が実施する資格試験です。プロの翻訳者に必要な知識とスキルを評価し、「JTA公認翻訳専門職」の資格を認定します。
試験は、筆記試験と実技試験の2部構成となっています。筆記試験では、翻訳に関する知識や翻訳理論、職業倫理などが問われます。一方、実技試験では、実際の原文を訳出する能力が試されます。
JTA公認翻訳専門職の資格を取得することで、翻訳者としての専門性と信頼性を高めることができます。特に、企業からの翻訳発注の際に、この資格が評価されるケースが多いようです。
受験対策としては、JTAが発行する『JTA公認翻訳専門職資格試験 公式テキスト』などを活用するのがおすすめです。翻訳理論や翻訳技法について体系的に学ぶことができます。
また、実技試験対策として、様々なジャンルの文章を数多く訳出する練習も欠かせません。翻訳検定・資格の活用法翻訳検定・資格を取得することで、以下のようなメリットがあります。
検定の種類 | 概要 |
JTFほんやく検定 | 日本翻訳連盟(JTF)が実施する翻訳検定。実用レベル2級以上の合格者は、「検定合格者リスト」に登録され、翻訳会社からの注目度が高まる。 |
NIPTA知的財産翻訳検定 | 日本知的財産翻訳協会(NIPTA)が実施する検定試験。1級の合格者は、NIPTAのウェブサイトで公開される「1級合格者リスト」に掲載され、知的財産翻訳者としての地位が高まる。 |
TQE翻訳能力検定 | 株式会社サン・フレアが実施する検定試験。1級の合格者は、NIPTAのウェブサイトで公開される「1級合格者リスト」に掲載され、知的財産翻訳者としての地位が高まる。 |
JTA公認翻訳専門職資格試験 | 日本翻訳者協会(JTA)が実施する資格試験。企業からの翻訳発注の際に、この資格が評価されるケースが多い。 |
検定取得から案件獲得までのロードマップ
検定取得をすることのメリットとして、案件の獲得を容易にするという事が挙げられます。実際の検定取得から案件獲得までの一般的な流れは下記です。
検定に合格する
まずは、JTFほんやく検定、NIPTA知的財産翻訳検定、TQE翻訳能力検定など、目指す分野の翻訳検定に合格します。これにより、一定レベル以上の翻訳スキルを有していることを証明できます。
検定主催団体の翻訳者データベースに登録される
検定に合格すると、検定主催団体が運営する翻訳者データベースに登録されます。例えば、JTFほんやく検定の実用レベル2級以上の合格者は、希望すればJTF公式サイトとJTF機関誌に翻訳者プロフィールを掲載できます。
翻訳会社からのスカウトを受ける
翻訳者データベースに登録されると、翻訳会社からのスカウトを受ける可能性が高まります。特に、専門性の高い分野で上位級に合格していると、その分野を専門とする翻訳会社から直接連絡が来ることがあります。
翻訳会社のトライアルを受ける
翻訳会社とのマッチングが成立すれば、次はトライアル(実力テスト)を受けます。検定の上位級に合格していれば、このトライアルで優遇措置を受けられる場合があります。例えば、JTFほんやく検定の2級以上の合格者は、JTF加盟企業20社程度からトライアルの条件緩和などの優遇を受けられます。
トライアルに合格し、翻訳会社に登録される
トライアルに合格すると、翻訳会社の翻訳者として正式に登録されます。登録後は、翻訳会社から定期的に案件の割り当てを受けることができます。
優良な実績を積み、さらなる案件獲得へ
優良な実績を積み、さらなる案件獲得へ
翻訳会社から受注した案件で優良な実績を積むことで、さらなる信頼を獲得し、大型案件や高単価案件を任されるようになります。また、口コミで評判が広がることで、他の翻訳会社からもオファーが来るようになります。
このように、検定合格をきっかけとして、翻訳者データベースへの登録、翻訳会社からのスカウト、トライアルの優遇措置など、段階的に案件獲得へとつながっていきます。
ただし、検定合格が即案件獲得を保証するわけではありません。あくまでも、検定は翻訳者としての実力を証明する一つの手段であり、その後の実績積み重ねが重要だと言えます。
検定を活かしつつ、地道にスキルアップを図ることが、安定的な案件獲得への近道と言えるでしょう。
まとめ
翻訳検定・資格は、翻訳者を目指す人にとって、自分の実力を証明し、キャリアアップを図るための有効な手段です。取得を目指す方は、自分の目標やレベルに合わせて、チャレンジしてみたい検定・資格を選んでみてください。
たとえ取得が叶わなかった場合でも、合格を目指して努力することで、翻訳者としてのスキルと自信を着実に高めていくことができるはずです。
ただし、検定取得が翻訳者としてキャリアアップしていくための方法ではありません。ご自身にとって有益な方法を探る中で、検定取得が必要と判断した場合には、本記事を取得に向けての参考にしていただければ幸いです。